VoicingBoard

いつ、どんな場面でVBを活用すると効果的なのでしょうか。VBは、表面的には単なるマンガ描画ソフトですが、前に説明したような思想的背景を持っています。対話的思考の支援というVBのゴールを理解して活用の方向性を探りましょう。以下に、VBを使った活動の構成例を示します。

1) 登場人物とセリフの設定

 VBでは、登場人物の絵を選ぶことで簡単にマンガを構成できます。登場人物の絵は実践者が設定することができますが、あらかじめ用意されている登場人物の絵はどんな人物にも見立てが可能なような抽象度で描かれています。
まず、自分の主張・意見に関連する登場人物とその人が言いそうなセリフをコマの中に入れていきます。その時、どんな登場人物が関係していそうか、その人はどんな表情で、どんな口調で意見を言っていそうかについて想像力を働かせるように指示します。加えて、吹き出しの種類によって言葉のニュアンスが変わること。また、一人の人物に2つの吹き出しを表示することで「建前と本音」のような二面性が表現できる点も学習者に伝えます。

2) ストーリーの構成

 VBのコマは20コマまで増やせます。背景画を自分で設定することも可能です。これらの機能を利用して、自分の主張・意見が人々に受け入れられるようなマンガのストーリーを構成します。自分と人々の対話をうまく調整しながら、ストーリーの流れをつくるよう指示します。この時、自分にとって都合のよい人だけでなく、敵対する人もうまくストーリーに組み込むように促します。そのために証拠を整えたり、妥協案を出したりしながら、なんとかわかってもらうように考えていくことが重要です。場合によっては、自分の主張が崩壊するようなストーリーを作ったり、他の学習者とマンガを交換して互いのマンガに登場人物を追加しあったりすることも考えられます。

3) 振り返りと修正

 マンガが完成したら、それを見ながらリフレクション(振り返り)をおこないます。そのストーリーで本当によいのか?ストーリーを構成する中で無視してしまった人はいないか?登場人物が都合のよいセリフだけを言わされていないか?といったことに注意しながら、アイデアを再度吟味するように指示します。
スライドショー機能を使ってマンガをクラスの皆にみせながら説明をしたり、2画面モードを使って自分のマンガと他の学習者のマンガを比較したりすることも効果的です。このような再検討をとおして主張・意見を修正させます。

VBを活用した授業実践

 様々な意見を考慮しながら考えをまとめるような活動や、コミュニケーションのあり方を改善するような活動にVBは適しています。現在、現場の先生方によってVBをつかった様々な授業実践が試みられています。皆さんも、実践事例を参考に、VBを使った授業改善案や単元計画、指導案を考えて下さい(注1)。

注1)VBを動かすのに必要なのは、インターネットにつながった児童・生徒用PCです。FlashプレイヤーがインストールされたWebブラウザがあれば、どんなOSでも利用できます。

梅組(UMEGUMI)

  • 加藤 浩: 放送大学
  • 鈴木 栄幸: 茨城大学
  • 久保田 善彦: 上越教育大学
  • 舟生 日出男: 創価大学
  • 望月 俊男: 専修大学